家族信託のメリットとデメリット

家族信託

家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族や相手に託し、特定の人のために、あらかじめ定めた信託目的に従って、管理・処分・承継する財産管理手法です。

家族信託のメリット

自分の意向に沿った財産管理を家族に任せることができる

家族信託の一つのメリットは、自分の意向に基づいた財産管理を家族に任せることができる点です。家族信託を通じて、信頼できる家族や相手に財産を託すことで、自身が亡くなった後も財産が自分の思いどおりに管理され続けることが可能となります。

成年後見制度では難しい柔軟な財産管理が実現する

成年後見制度は、高齢者や障害者の財産管理を担当する制度ですが、柔軟な財産管理が難しいという欠点があります。一方、家族信託では、財産管理の目的や方法をあらかじめ設定することができるため、より柔軟な財産管理が実現できます。

遺言としての機能も果たす

家族信託には、遺言としての機能も備わっています。自身が亡くなった後、託された財産が所定の信託目的に従って利用・管理されることが確定しており、家族による揉め事や紛争を未然に防ぐことができます。

不動産の共有によるリスクを回避できる

不動産の共有は、相続時におけるリスクの一つです。家族信託を利用することで、家族メンバー間での不動産の共有を回避し、スムーズに財産の処分を行うことができます。

相続時の負担が軽減される

相続では様々な手続きや負担が伴いますが、家族信託を活用することで、相続時の負担を軽減することができます。家族信託では、事前に財産管理や相続手続きなどを明確に定めておくことで、円滑な相続手続きを実現することができます。

倒産隔離機能がある

家族信託には、倒産隔離の機能も存在します。信託財産は、信託契約に基づき、信託財産独自の資金管理や負債の処理が行われるため、万一、信託財産を託した家族や相手が倒産した場合でも、信託財産は別途扱われます。

二次相続以降についても決められる

家族信託では、不動産などの財産に対して、二次相続以降の承継方法をあらかじめ設定することも可能です。これにより、財産が子供や孫など正当な相続人に引き継がれることが保証されます。

事業承継対策もできる

家族信託は、事業を経営する場合にも有効な手段となります。事業承継においては、家族信託を通じて事業の管理・処分・運営を円滑に行うことができるため、事業の安定的な継続が可能となります。

以上が家族信託のメリットです。家族信託を利用することで、自分の財産を有効に管理し、家族や特定の人のために適切に承継することができます。ぜひ、将来の財産管理や相続について考える際には、家族信託を検討してみてください。

家族信託のデメリット

家族信託は、資産管理や相続対策において有益な手段として利用されています。しかし、家族信託にはいくつかのデメリットも存在します。本記事では、家族信託のデメリットについて詳しくご説明します。

意思能力を喪失した後では利用できない

家族信託は、設定者である本人が意思能力を保持しているうちに設立する必要があります。つまり、認知症や精神障害によって意思能力を喪失した後には、家族信託を利用することはできません。そのため、将来のことを考えるときには、家族信託以外の方法も検討する必要があります。

損益通算ができない

家族信託では、資産の運用による損益通算ができません。つまり、信託財産が損失を出した場合でも、他の資産の利益で損失を相殺することができません。そのため、資産運用のリスクを分散させるためには、他の方法を検討する必要があります。

節税対策にはならない

家族信託は、節税対策として利用されることもありますが、必ずしも効果的とは限りません。家族信託によって資産を移転した場合、相続税を回避することはできますが、贈与税や所得税など他の税金がかかる可能性もあります。そのため、節税対策を目的とする場合は、専門家との相談が必要です。

信託できない財産もある

家族信託では、信託財産として設定できる範囲に制限があります。たとえば、一般的な生命保険や退職給付など、特定の法律で規定された財産は信託にできません。そのため、家族信託を検討する際には、信託にできる財産の範囲を確認する必要があります。

成年後見制度でしかできないこともある

家族信託では、成年後見制度が提供する支援や保護を受けることはできません。成年後見制度は、意思能力を喪失した人のために設けられた制度であり、設定者自身が意思能力を保持しているうちに手続きをする必要があります。そのため、将来の不確実な事態に備えるためには、家族信託と併用することが考えられます。

税務申告の手間がかかる

家族信託を設立した場合、信託の受益者や配当を受けるためには、税務申告が必要です。税務申告は、手続きや書類の作成などが煩雑であり、手間がかかる可能性があります。そのため、税務申告に関する知識を持つ専門家の助言を受けることが重要です。

長期にわたって受託者が拘束される

家族信託では、受託者が一定期間にわたって拘束される可能性があります。設定者が指定した期間や条件に従って、受託者が財産を管理したり、資産を配分したりする必要があります。そのため、受託者にとっては負担となる場合もあります。

「受託者の暴走」の危険性がある

家族信託では、受託者が資産を管理する責任があります。しかし、受託者の判断や行動に問題があった場合、信託財産が悪用される危険性があります。そのため、受託者の選定や監督体制の構築が重要です。適切な受託者を選定することで、信託のリスクを軽減できます。

まとめ

家族信託は、資産管理や相続対策に利用されることがありますが、デメリットも存在します。意思能力を喪失した後では利用できないため、将来の不確実な事態に備える必要があります。また、節税対策や損益通算には限定的な効果があり、信託できる財産も制約があります。さらに、税務申告の手続きが煩雑であったり、受託者が長期にわたって拘束される可能性もあります。そのため、家族信託を検討する際には、長所だけでなくデメリットもしっかりと理解し、専門家の助言を受けながら進めることが大切です。